» Vol.52 クレーマー

クレーマー

 

 

強烈な、何とも言えない家族の対応に苦慮したことがあった。

所謂クレーマーである。

入所当初より頻繁に訪れて看護師や介護職員に注文や文句を付けた。

同じことを何人かの介護職員にいうので、僅かな対応の違いに対し更にクレームであった。

 

「昼寝の時に布団の端が捲れていた」

「ティッシュの箱の位置が違っている」、などである。

 

私が関与したのは、「何処かにぶつけたのか小さい紫斑があったが大丈夫なのか」

急性上気道炎に罹患し抗菌薬を投与したところ、「余計な治療を行ったのでは」と面談、尿路感染症となり治療を行ったところ、「清潔にしてくれていないのでは」と介護職員を問い詰めるなどで、対応に多くの時間を費やすことになった。

努めて冷静な気持ちを保ち、対応せざるを得なかった。

 

この施設が合わないなら他の施設へ移られてもいいのですよと話したこともあった。何度か会議で議題に上がり話し合いが持たれた。そして以下のように私は考えるに至っている。

しばしばクレーマーは、特異な家族として処理され悪夢のように忘れるようにして時間と共に風化してしまうことがある。

しかし、考えてみるとクレーマーは制御がきかない異常な状態と思うが、潜在的に多くの家族が思っていることが際立って表出したものであるかもしれない。

その意味で、クレーマーの訴えや行為を慎重に分析し反省や是正の契機にする考えが大事ではないかと思う。

 

様々な事柄は職員間で情報の共有に心掛け、しっかりした方針を立てることが必要と思われる。

日頃、培ってきた職員の連携のもと、話し合いを持つことにより利用者の為に家族に対し冷静に対応することが出来ると共に職員の向上につながると思っている。

この時、大事なことはリーダーのブレのない姿勢である。

 

利用者である母はおとなしく、介護職員に感謝の言葉をかけるような認知症の高齢者であった。

その後、半年以上が過ぎ、この母を思う娘さんは転居することになり他の施設に移られたが、クレームはほとんど聞かれなくなり会議で検討するようなことはなくなっていた。

 

 

 

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