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大井洋之先生のブログ <第2章> 介護老健施設施設長のやりがい日記”日日是好日” 

<第2章>Vol.17 新型コロナ感染症と介護職員

2021年01月16日

新型コロナ感染症と介護職員

 

 

昨年は新型コロナ感染症対策に追われた年であった。勤務している介護老人保健施設(老健)では新型コロナ感染症(コロナ)の危険性を何度か感じたことはあったが施設内に感染者を出さないですんだ。職員の多くの協力を得てかなり厳格な対応を行ったので私は職員の底力によるものと感じた。家族の面会中止は継続されていた。

 

ところが年末から無症状で微熱が認められた90歳の長期入所者が抗菌薬投与にもかかわらず正月から高熱を認めた。正月で検査会社は休みであった。精査が必要と判断して直ぐに関連病院に入院を依頼した、ところが胸部レントゲン所見でコロナの可能性がありと判断され基幹病院に転院となりコロナと診断された。通常勤務が始まった1月4日の事であった。

 

そこから施設は大変な状態となった。同じテーブルで食事をしている利用者について抗原検査を行い3人が感染していることが分かった。その5階フロアーは全員が個室なのでそのまま隔離を行うことが出来た。後日、フロアー全員にPCR検査を行いそのほかの利用者は陰性であった。翌日の1月5日に、3階のフロアーから微熱の利用者が数人認められ抗原検査を行ったところ全員が陽性と判定された。3階は大部屋であり認知症の利用者も多く、隔離などの対応は困難であった。

その後、そのフロアー全員にPCR検査を行った。保健所の指示を得ながら対応していたが、感染の拡大は早くそのフロアー全員がほぼ感染していることが分かった。救急搬送するような重症者でなければ入院は出来ないということであり殆どのコロナの利用者は施設で対応することになった。外部からの感染は当初考えられなかったが後日、感染経路を想定することが出来た。対応しながら老健の宿命的なものを感じた。

 

職員全員にも早期に抗原検査やPCR検査を行ったが、残念なことに介護職員が最も多く9名にコロナが認められた。介護職員は普段から身を挺して介護を行っている。認知症で理解に乏しく、しかも耳が聞こえない利用者が多いので顔を耳に近づけて大声で話をする。食事介助も接近して話しかけ丁寧に行う等、どうしても感染リスクは高くなる。

フロアーがクラスター状態になっても介護は継続された。万全な感染対策を行いながら今までと同じように利用者に対応する介護職員を見ていると本当に頭の下がる思いがするし、畏敬の念を感じ、同じ施設に勤務する者として誇らしく思った。

 

テレビでコロナに関して多くの専門家がコメントしている。新聞などを見ても同じようなことが言われている。しかし、介護職員の働きについて伝えているのをあまり見聞きしない。介護施設でコロナの集団発生が報道されるとあたかも施設に何か不備があったのではと囚われがちである。テレビなどで医師や看護師の活躍を報じたものはあるが、この状況にあって高齢者の介護という重要な任務を行っている介護職員は日陰に存在しているように思うのは穿った見方なのであろうか。感染者の多数いるフロアーで黙々と利用者に対応してくれている介護職員を見ていると利用者に対する深い献身的な思いや施設に対する責任感と共に彼らの勇気を感じる。

コロナ禍でなくても高齢化社会にあって彼らはもっと注目され大切にされていいはずだ。  

彼らが報いられることはないのであろうか。

一日も早く施設を通常の状態に戻したいと強く願った。

 

 

 

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