» Vol.93 隠さない

隠さない医療

 

 

 

 

80歳を過ぎた車椅子生活の男性の利用者は認知症で易怒性があり、

ちょっとしたことでいきなり職員を引っかいたり、殴ったりした。

薬剤を試したがなかなかコントロールが出来ず、他の利用者に多大な

悪影響を与えることになり精神科専門病院へ入院となった。

この利用者のキーパーソンは娘さんであったが、親子関係は途絶えており、

娘さんは施設に来られることなく、顔を合わすことも拒否されていた。

 

数か月間入院しその後、施設に再入所となった。

少し落ち着いた状態になったと思われたが、頻度は少なくなったが

暴力をふるうことは変わらなかった。

しかし介護職員は上手く対応し比較的安定していた。

 

利用者は以前から軽度の貧血があり、血小板が少ないことより経過を見ていたが

進行性であり、娘さんを説得し大病院の血液内科に紹介した。

ようやく受診となったが診察時に利用者が怒り出し、検査は出来なかった。

担当医からは確定診断はついていないが、進行性の血液疾患であり

このままであればミゼラブルな状態になると返事をもらった。

 

その後、経過を見ていたが突然、高熱が出現し尿路感染症の診断で治療を開始した。

血液検査の結果で貧血は予想以上に悪化しており、直ぐに輸血などの治療が

必要なことより入院適応と判断し、詳細に情報提供書を記載し

相談室に病院を探してくれるようにお願いした。

 

しばらくして相談員よりこの紹介状では病院は引き受けてくれないので

文面を削除することを迫られた。 

削除箇所は暴力行為、治療拒否や親子関係が途絶えているなどの箇所であった。

私は拒んだが結局、削除してしまった。 

しかし、その後も数か所の病院に掛け合っても入院は断られた。

翌日になっても入院先は決まらなかった。

その間、病院にお願いするのに利用者の状態を隠すことは、医療に携わる

ものとしては恥ずべき行為だという気持ちが沸々と私の中に湧きあがってきた。

 

 

そして情報提供書を削除前に戻し、以前、親身になってやってくれた

思い出のある病院の相談室に私は電話し、事情を説明し

情報提供書は隠すことなくありのまま書いたことを伝え、

ご判断いただきたい旨を伝えた。

その結果、その病院が引き受けてくれることになった。

 

経過を考えると忸怩たる思いと共に医療には隠蔽は絶対にいけないと胸に誓った。

 

医療には「逃げない」「隠さない」「嘘をつかない」が大事であるといわれ、

私も言ってきたが改めて胸に刻みたい思いがした。

 

 

 

 

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