» Vol.61 認知症の利用者と話をする

認知症の利用者と話をする

 

 

 

時間的に余裕があると認知症の利用者と話をする。

 

比較的意志の疎通が可能な認知症の利用者がおられる2階フロアーで、

他の利用者と一緒にテレビを見ないで少し離れたところにいつもポツンと車椅子に乗った利用者がおられた。

時間に余裕のある時、そばにある椅子を車椅子の横に持って行き、

座って足を組みリラックスして話しかけた。

 

過去の話をすると忘れており、かえって悲しみを与えることになると思い、そのような話はしないことにしている。

二人で並んでいると介護職員、看護師、事務の人などが忙しそうに前を通過する。

そのことを話題にすることが多い。

 

看護師が通ると、

 

「看護師さんの○○さんは美容室に行ったようだね。きれいだね。」

「本当だね。」

「○○さんが付けている髪飾りはいい色ですね。」

「本当に、わたしも好きな色だ。同じような色の髪飾りを持っているよ。」

「誰かにもらったの?」

「娘にもらった。」

「いい娘さんだね。」

「娘は気が強くてお婿さんは大変だよ。」

「○○さん(利用者本人)に似ている?」

「娘だから似ているよ。」

「それじゃあ美人だね。」

「ブスだよ。」

「○○さんに似ているなら美人だと思うよ。」

「よく言うよ。」

「若いころはモテたでしょう。御主人は見合いだったの。」

「そうだよ。見合いしたら二回も三回も来て私をほしいって言われた。

仕方がないから結婚したよ。でも前に好きな人がいたの。

井の頭公園で一緒にボートを漕いだ人がいたよ。」

「その人とはどうなったの。」

「やがて一緒になるつもりでいたの、でも戦争で亡くなってしまったよ。」

「でも今は立派なお子さんがいて幸せになったからいいね。」

「夫は若くして死んだから苦労して子供を育てた。一人で働いて育てて大変だった・・・・」

 

など話しているうちに

 

「先生は暇なの。」

「うん少し時間があったから話したいと思って。」

「それでここで油を売ってるんだ。」

「大きな声で言わないで。」

大笑い。

 

こんな会話をすることがあるが、過去のことやいろいろな事項を

話題にするよりも、今、目で見えること、特に今、見えるいつも

かかわってくれている人を最初に話題にするといろいろ会話は

広がってくるように思われる。

 

この利用者は時々興奮し険しい表情を見せ暴言を発するが、

こうして話してあげると2-3日は落ち着いて過ごしていた。

今の時代は認知症の人にとってもあまりにも周囲が忙しく、

目まぐるしいと感じる。

 

認知症の人にも、認知症に関わる人にも、ゆったりした時間が必要であると思う。

 

 

老健施設で働きたい医師を募集しています

まずはコンサルタントにご相談下さい

先生の貴重なご経験を生かすにはまず、
こちらから!

老健管理医師として働きたい方
採用ご担当者様
お問い合わせはこちら

PAGE TOP