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看取りケア①

 

 

2010年特別養護老人ホーム芦花ホームの常勤医でおられる石飛幸三先生は特別養護老人ホームにおける胃瘻の多さへの疑問から、老衰や認知症の終末期を自然な経過に任せる「平穏死」を提唱されました。

 

施設職員の中でも胃瘻造設は自然に反することで良い事ではないと考える方も多くいらっしゃいました。

この頃、胃瘻を造設している高齢者のご家族から、

「私たちは悪いことをしたのか、友人からなぜそんな事をしたのかと中傷されて、辛い」と相談を受けたことがあります。

 

ACP(アドバンス・ケア・プランニング)もなく、言葉が独り歩きしていたような印象です。

 

私は、人生いろいろ、最期もいろいろがいいと思います。

 

 

超高齢のHさん

1日に1000mlの点滴で、浮腫が全身に出てきていました。

施設で、家族・医師・介護職員・ケアマネージャー・相談員・リハビリ職員・看護師で数度話し合いました。

点滴は痛みを伴うので安楽な最期にならないのではないか、と考える職員が多かったように思います。

家族は、「もう少し生きていてほしいので点滴はして欲しいですが、痛みが強いようであれば点滴は諦めます。」とおっしゃいました。

私はHさんが漏らした言葉「私、生きてていいの」が頭から消えず悩みました。先輩看護師から、少しでも長く生き抜くことがHさんらしさではないかとアドバイスを受け、看取りケアは安楽を最優先にするだけではないのだと、学びました。

Hさんは輸液量を減らしながら可能な限り点滴をして、最期を迎えました。

 

 

立派な父親を全うされたAさん

病院での最期は嫌だとご家族が強く希望され、施設に戻ってこられました。ご家族の施設への思いを知り、生活の場のケアのやりがいを感じました。

施設に戻られた時には、殆ど会話も出来ない状態で、水分・食事が数口入ればいい方でした。すぐに何も口にできなくなりました。

妻はもう十分頑張ってきたのだから、楽にしてあげたいと希望され、夫への思いを手紙に書かれ本人の枕元に置かれました。

娘は、せっかく施設に戻れたのに、すぐに亡くなるなんて受け入れられないとおっしゃられました。

妻・娘で話し合い、家族が出した結果は、【過度な痛みを与えない程度に補液を行い、少しでも長生きしてほしい。】でした。

 

職員の中には、最期まで点滴の針による痛みを与える事に疑問を抱く職員もいました。

その気持ちもよく分かります。

しかし、Aさんが死を迎える高齢者である前に、夫であり、父親である事を少し忘れていたような気がします。

大好きだった音楽をかけ、空が見えるようにベッドの向きを変えました。点滴は無理のない範囲で行いました。

施設に戻り、29日目にお亡くなりになりました。

父の死を受け入れられない娘の為に、最期まで頑張られた立派なお父様の姿を見せて頂き、感動しました。

 

思い返しても、似てると思う看取りケアはありません。

 

看取りケアとは究極の個別ケア(その人らしさ)だと思います。そして、人生最期のケアに携わらせていただく事に誇りを持ち続けたいと思います。

 

 

 

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