» <第2章>Vol.3 介護 ~老健はもっと良くなる~

大井洋之先生のブログ <第2章> 介護老健施設施設長のやりがい日記”日日是好日” 

<第2章>Vol.3 介護 ~老健はもっと良くなる~

2019年08月01日

 

介護士諸君 もっと胸を張れ、

医師たちよ、介護士さんともっと心開いて話をしよう

そうすれば老健はもっと良くなる。

 

 

 

その利用者は高齢の認知症の女性であった。

ご主人と息子さんがおり家族としての絆が感じられ施設の決まりに協力的であった。

以前、認知症の様々な周辺症状が出現し、施設として対応困難となり

精神科を専門とする病院に治療目的で入院した。

老健で介護を受けることが可能となり病院から再入所された。

ところが入所後、しばらくして活気がなくなり嚥下障害が認められるようになった。

薬剤の副作用を考えて継続投与されていた抗精神病薬を減量したところ、

幸いにも改善を認め、落ち着いた状態となっていた。

 

数か月が過ぎ、看護師から最近、主に夜間に徘徊、

自分の便をこねて部屋などに放置、

盗食(他の人の食事や飲み物を取ろうとする)などの症状が現れ、

ますます酷くなっていると報告を受けた。

昼間は比較的おとなしい様子で落ち着いていると思っていたので

現状を知らなかったことに対し忸怩たる思いが湧いた。

直ぐにそばにいた介護士にも聞いてみた。

介護士は戸惑っていたようであったがあれこれ率直に話してくれた。

「大変だね」と言うと「とても大変です」と言われた。

『大変です』と言う言葉を聞いて胸痛む思いがした。 

そして「何故、私に今まで伝えなかったの」と尋ねた。

「先生に直接言ってもよろしいのですか?」と言われた。

『当然でしょう、みんなで連携して行っているのだから』

と声には出さず思いが湧いた。

数か月前より受けもったフロアーは今まで介護士が医師に直接伝えることは

なかったようであった。

他の老健施設を経験した介護士等も医師と話すことは殆んどなかったようであった。

また、役職者に介護困難を伝えても「個々の介護士の対応の問題では」

と思われてしまうことが多く、「何を言っても変わらない」という声も聞いた。 

私はその日、報告された利用者について同じフロアーに勤務していた介護士、

看護師の全員に状態を聞いて後、再入院が必要と判断し、

すぐに家族の了解を得て入院の手はずを整えた。

直ぐに入院の判断をして行動したことは介護士に何らかの変化を及ぼしたようで、

その後、介護士が「先生、今日○○さんは顔が浮腫んでいるようです」

等と伝えてくれるようになった。

 

 

多くの介護士は大変な利用者に対してもたんたんと介護を行ってくれる。

とても尊い良い事なのであるが、彼らは耐えることが当たり前に

なってしまっているのではないかと懸念する時がある。

家族が介護を放棄するぐらい大変な利用者の介護を行っていることも少なくない。

介護職は耐える仕事ではない。

耐えることは改善や改革に結びつきにくい。

介護の過程で何か問題があればヒヤリハットや事故報告書を書くことになっている。

ほとんどの老健の利用者は百名以上の高齢者であり

毎日の日常生活で何もないことはない。

そして報告書などは介護士が忙しい中、時間を割いて書くのであるが、

本来の目的である報告内容の背後にある問題点を検討し

改善がなされないなら単に報告書は罰則的な域を出ない。

東京都などにより行われる実地監査で指摘されないようにする為であり、

介護士が耐えることで済まされてしまうことはないのであろうか。

 

どんな仕事も大変だ。

しかし介護職を考えてみると、利用者は実に様々で限られた人数の介護士の

介護業務のキャパシティーを判断する基準を作ることが難しく

客観的評価はしにくいであろう。

一つのフロアーを限られた人数の介護士が業務にあたるのであるが、

フロアー全体の介護困難度も変動するので評価がしにくいと思われる。

だからこそ様々な事についての問題点を考えることが必要であると思う。

改善がなされないなら、真面目に仕事をする介護士の負担は増し

離職に繋がるのではと懸念する。

 

介護士さんに伝えたい、「諸君の行っていることは尊い仕事、

卑下することなく誇りをもって胸をはれ。

自信をもって考えや思いを発信してほしい。

それが介護領域の改善に結びつくと思う。

我々介護に携わる医師も高齢者における介護の重要性と共に

介護士の大切さを認識し、医師が彼らとコミュニケーションを持つことを

心掛けることは日常の診療のみならず介護分野の発展の為にも必要だ」

と一か月分の少なくないヒヤリハットの報告書と事故報告書に目を通し

捺印しながら思った。

 

フロアーのステーションで介護士と利用者の状態について話していた。 

介護士が離れた後、傍で仕事をしていた若い看護師が

ドクターが介護士さんと話をしているのはとってもいい感じ」

と言われた。

不意に言われたのであるが、これだなと嬉しい思いがした。

 

 

老健施設で働きたい医師を募集しています

まずはコンサルタントにご相談下さい

先生の貴重なご経験を生かすにはまず、
こちらから!

老健管理医師として働きたい方
採用ご担当者様
お問い合わせはこちら

PAGE TOP