老健施設で思う、管理栄養士の役割とは
老健には管理栄養士がおります。
利用者にとって何より食事が大切であり、楽しみでもあることより大事な職種です。
限られた予算で利用者が満足出来る食事にすることは、大変な仕事だと思います。
殆どの施設の調理は、委託会社により行われていることより、
施設と会社の調整も行います。
利用者は何らかの病気に罹患しており、老化の程度は多様で日々流動的であり、
月や年単位でみると進行性でそれに伴い嚥下機能の衰えも認めます。
そのような利用者に、どのような食事を選択するか頭を悩ませることがあります。
食事内容は医師の指示のもとに行われるのですが、実際に食事介助に携わっている
介護職員、看護師やSTの意見は重要です。
また、施設の相談室から家族の思いが伝えられることもあります。
栄養委員会などで話し合いが行われるのですが、
職員の日ごろの連携がうまくいっていないと、利用者や家族の思いとは
異なるところでの議論になりがちで、そのようなことになると利用者に対しての
対応は消極的にならざるを得ません。
嚥下障害のある利用者が、入所時より病院で入院していた時の食事内容が継続され、
全粥、おかずはキザミ おやつはゼリー状で、パン、麺類は禁止となっていました。
ところが体調の改善がみられた利用者から、
「もう少し形のあるものを食べたい」と希望がありました。
又家族より、
「甘いものが好きなのでケーキなどを少しでよいから食べさせたい」
との願いがあるとケアマネから伝えられました。
STの評価は、
「嚥下障害があり誤嚥性肺炎になってしまう危険性があるので難しい」
と判断されました。
管理栄養士は、
「今の食事内容以外のものを作るのは、厨房の委託会社から無理であると言われた」
と述べられた。
看護師は、
「この利用者は嚥下が良い時と悪い時があり、もう少し形のある食品を試みたいし、
食べられると思う」と言われた。
介護職員も同じ意見で、
「利用者が死んでもいいから、もう少し普通の食事がしたいと懇願された」
と話された。
議論が進むにつれ、
「食べさせて誤嚥性肺炎になっても、私の責任ではない」
などの発言が聞かれるようになった。
結局、今のままの食事で様子を見ることになりました。
リスクを伴うことは、反対があればそれを押し切って行うことは難しいものです。
現場では、「食べさせたい思い」とのギャップを感じながら、
今までと同じ食事が継続されることになりました。
相談室に聞くと、家族の不満は施設に入ったことで、
「家では食べていた好きなものを食べさせてあげられない」
ことが多いようです。
どうするかはケースバイケースで、難しいがいくつか感じることがありました。
それはチームワークが大切だということであり、これには家族もチームの一員
になることが望ましいと思われます。
忌憚なく落ち着いて話し合いが出来るチームワ-クにより、
情報の共有が出来ること、利用者の希望を少しでも叶える可能性が生まれる
のではと思われます。
それにはリスクを伴うので勇気が必要ですが、その勇気もチームワークにより
生まれるものと思われます。
不可能であっても、話し合うことによりご家族も職員も納得することが大切である
と思います。
食に対する家族の思いと、利用者の希望とそれに反するような利用者の状態、
このギャップを如何に小さくするかは大きな課題であり、管理栄養士の本来の
仕事と思います。
ST(言語聴覚士:Vol.34参照)
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