» Vol.44 高齢者の食事について

高齢者の食事について ~おいしく食べてもらうのが大事~

 

 

 

 

入所時には、今まで診てもらっていた担当医の治療方針に則した食事療法を行う。

経過をみていると、高齢者では考え方を変えた方がよいと思う時がある。

年齢と共に食が細くなるのはごく自然である。

代謝や運動量の低下により、体が必要とするカロリーは若い時より少なくて良いからである。

 

痩せている100歳の人に高血圧があるといって塩分6gの減塩食が継続されていた。

食事の摂取量を見ると半分摂れているに過ぎない。

話を聞きに行くと梅干し、漬物が大好きで、これがあればご飯は美味しく食べられると言われる。

 

家族には、何よりも、「まず食欲が大切で、普通食を食べても全量食べられないので塩分が多すぎることはない」と説明した。

幸いにも家族もそう思うと言ってくださり、早速、「食事を普通食にして梅干しや海苔のつくだ煮など食べ過ぎないならいいですよ」と食事の変更を利用者に伝えると、軽い認知症の利用者は涙して先生ありがとうと言われた。

 

その後の食事量を見ていると、7割は食べられるようになり、廊下で車椅子に乗っているときに話しかけたら、とっても美味しく食べられ、今まで食事が苦痛だったが今は待ちどうしいと言われた。

毎日、観察をしていた血圧も安定していた。高血圧などで塩分制限をするのは普通に食べられる人の為の制限であり、成人の半分ぐらいの少量しか食べられない人への制限は考慮が必要である。

 

ケースバイケースだが、塩分制限よりも普通食でおいしく食べてカロリーを取った方がよいと思う利用者がいる。

もともと食塩を使用した食事は美味しい。しかも高齢者の味覚は衰えているので味気のない食事をするより、塩分は普通にして美味しいと思って食べる方がどんなに心身に良いことかと思う。

高齢の方は、腎不全でカリウム制限の為に生野菜、果物を制限するなどの生命に直接影響を与えるもの以外は、食形態は考慮するが味付けや種類は一般成人とは別の考え方も必要であると思う。

 

なんといっても、おいしく食べられることが大事だと思う。

最近、美味しく食べると消化管からの吸収も良いという事が証明されている。栄養、食事やその評価は高齢者の場合、成人における食事療法があてはまらないことがある。

 

 

 

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