死を念頭においた医療 ~老健の終末期医療を考える~
病院にいた頃は患者さんを可能な限り改善に導こうと思っていた。
若いころは特にその思いは強かったと思う。
老衰の人に過度な治療を行ったこともあった。
家族や先輩医師の意向で何時間も心臓マッサージを行ったことも
あった。
現在ほど高齢化社会になっていなかった頃であったが振り返えると
なんとも言えない気持ちになる。
私自身は年齢とともに、時代とともに変わってきたと思うが、
特に老健に勤務してから臨床に対する考えが変化したと思う。
老健に勤務して、高齢者に対し生は当然であるが、死を念頭においた
医療も老健の医師の大事な任務ではないかと思うようになった。
もう少し具体的に言うと、「看取りを前提とした医療」があってもよいし、
その必要性があると思っている。
老健は包括化なので、利用者の状態を考慮し、予後を見据えて
医療の枠を小さくすることは経営的にみても何ら問題なく、
その先の看取りは介護報酬を得ることが出来るようになっている。
一方病院は、治療するところであり、積極的な治療により経営的にも
メリットが生じる。
しかし一律な医療は国全体を考えると医療費は国の財政を圧迫することになる。
このことを見ても、老健の大事な役割として看取りがあると思う。
看取りを行うまで至っていない施設では、医師として長期間診ていた
利用者が老衰の兆候が明らかになった時、ご家族とのふれあいも多く
あったことより看取りまでとの思いが湧いているにもかかわらず、
急変により病院に転送せざるを得ないことは、医師としても
辛いものであるし、何より利用者及び家族にとって酷だと感じる。
また受け入れてくれた病院の医師たちの心情を思うと、忸怩たるものがある。
看取りは、施設の方針及び職員の意識と共に、医師と利用者及び家族との信頼関係や心のふれあいによりなし得ると思う。
まずはコンサルタントにご相談下さい
先生の貴重なご経験を生かすにはまず、
こちらから!