老健施設とリハビリ チョっとした一言
その利用者は、パーキンソン病に罹り、その後下肢の血栓性静脈炎の
治療のために入院治療したが、その間に下肢の筋力が衰え日常生活が儘ならず
老健に入所しリハビリを行っていた。
認知症はなく年齢は80歳であるが、座っている姿は若々しく見える。
時々、鬱的になりリハビリを拒む時があった。
私がベットサイドに行き、あれこれ話すとヤットやる気になりリハビリを
行っている状態であった。
理学療法士の介助で歩行補助器を使い、身体をくの字にして一生懸命に
歩く姿は胸がうたれる思いがした。
その日は、朝食が終わり車椅子で階上へのエレベーターを待っているときに
私と目が会い何か訴えるような顔をされていた。
その後、看護師から「もうリハビリはやりたくない」と言っていると報告があった。
ベッドサイドに行きいろいろと聞いてみると、理学療法士から
「一生車椅子は手離すことは出来ない」と言われたと。
それを聞いたら、
「何時か一人で歩けるとリハビリを継続してきたが意欲が失せてしまった」
と暗い顔で言われる。
理学療法士からすれば、話の流れでその人の状態や経過などを考えて
話したことなのであろう。おそらく年齢や病状を考えてもそうなのである。
しかし、それを話したことで利用者は落胆したのである。
私は理学療法士の立場からは現実をハッキリいう事も時には必要なのであろう
と思ったりした。
その利用者はおそらく内心歩けるようにならないのでは、と思うことがあっても
その気持ちを打ち消してリハビリを継続していたのであろう。
医療的に事実であっても言わないことも選択肢と思うことがある。
この利用者は日々の生活でいろいろ悩み考え、そして自分が歩けないことを
やがて受け入れることが出来ると思われたからである。
昨今は医療においても情報を開示することが求められる。
しかし、高齢者には特に配慮が必要と思う。
事実を本人に知らせるにしても、時間をかけることやタイミングを考慮する
必要がある。
基本的には残された人生を楽しく過ごさせてあげたいと思うのである。
その利用者には様々なことを話した。その中で特にこう言えば元気になるなど
の特別な言葉はないと思う。
ただ出来るだけベットサイドに行きあれこれ話すようにした。
しばらくしてその利用者がリハビリに参加し、歩行器につかまり
以前と同じように歩いている姿を見てホッとした。
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