臨床医は一度は老健を経験しては・・・「医師の原点」
時々思うことですが、
臨床医は出来れば若い時に老健に1,2年勤務してはどうであろうか。
老健は病院とは別世界、これは私が病院からこの世界へ移った当時の感想である。
老健は包括化で検査も頻繁に出来ない。
レントゲン写真がとれる施設はほとんどなく、撮りたいときは
関連の病院に家族や職員が付き添って行くが、冬などは介護度の
高い利用者が病院で長時間待たされ、風邪などの病気を貰ってくる
危険性を考えると躊躇する。
そこで内科診断学の基本である視診、触診、聴診、打診 を駆使することになる。
老健では医師は一人で100人の高齢者を把握するため、介護士、
理学療養士、看護師などの他の職種の方とコミュニュケーションを
とり協力を得ることが必要である。
「医療における連携とは何か?」を考えざるを得ないと思われる。
半年も経ってくると、それぞれのスタッフの良さが解かり、チームとしての医療を行う上で彼らの存在が大きな強みであることを感じることが出来る。
また老健では、利用者の全員が何らかの病気に罹患しており薬を
服用しているが、病院やクリニックの処方を老健から見ると
薬の量や適応に疑問を感じることがある。
思い切って薬剤を中止したところ見違えるように元気になった
高齢者を経験したり、高齢者は薬剤の副作用の頻度が思っていたより
多いことなどを経験すると、高齢者に対する薬の適応や量を
考えさせられる.
病院勤務時代に外来では、数分の診療で、高齢者の診療は
認知症の本人にはあまり聞かないで付き添いの方と話して
検査や薬を出していたこと等を振り返ると、
高齢者のほんの断片しか見ていなかったように思う。
一見、変わってないように見える人が、介護職員や看護師の詳細に
書かれている記録や報告を得て認知症の進行が解かることがあり、
病院では得られない高齢者の臨床がそこにあるように思う。
「終末期の高齢者の対応」「積極的な治療は行わない老衰の対応」
「薬は後発品が使用される」など 一般の病院やクリニックとは異なる
医療がそこにはあり、医療とは何かを考える良い機会になると
思われる。
医師が老健を経験することは、国の医療費の削減にも繋がるのではと思うこともある。
私自身は老健に勤務して、忘れていた医師としての「初心」に
戻れることを感じることがあり、これを若い医師にも感じてもらいたい
思いがある。
関連ブログ
まずはコンサルタントにご相談下さい
先生の貴重なご経験を生かすにはまず、
こちらから!