老健施設における「感謝の気持ち」
病院に勤務していた時は、患者が良くなって退院するときは格別なもので、
うれしく晴れやかになった。
家族の感謝の気持ちも感じられ、退院の喜びを共有し感激することも多かった。
老健に勤務してから、このような気持ちになる機会に恵まれなくなった。
病院やクリニックは医療を行う場であり、医師と患者の関係がはっきりしている。
しかし、老健は利用者と管理医師の関係である。
ほとんどの利用者は介護とリハビリを目的に施設に入られる。
病気が安定している人が入られるのだが、安定した状態とは言えない利用者も少なからずおられる。
利用者の状態が悪化したら治療を行う。
誤嚥性肺炎や尿路感染症、さらに風邪やノロウイルスやインフルエンザ等の感染症が集団発症することもある。
その時は病院における医師と変わらない治療を行う。
利用者のほとんどは複数の疾患に罹患しており、薬剤による治療が行われている。
このような高齢者が感染症等に罹患すれば、重症化する危険性があり、
気が抜けない。
罹患した時から医療施設と同じで、医師と患者の関係になるのであるが、
家族や利用者にとっては介護施設であり、施設も利用者をお客様として扱って
いるようなところもあり、管理医師が医療を行うのは老健における
役割の一環として考えられるようだ。
管理医師によっては、重症化の兆しがあると躊躇なく病院に入院させる。
その方が老健の経営にとっても良いのかもしれない。
しかし、親しくなった利用者や家族の負担を考えると、絶対的な
入院の適応でなければ何とかしようと思うのは、長く内科医として医療に
従事していた血が騒ぐのかもしれない。
避けることも出来る負担を、医師として背負うよりどころは
「高齢者には介護が必要であり、老健には介護力があるから」です。
老健で重症化した高齢者の治療を行うには、家族と信頼関係を
得ていることが必要です。
入所中に罹った重症の誤嚥性肺炎が治り、入院することなく在宅復帰が
出来ることになった重度の認知症の利用者に退所時に、
「ありがとう」と言われ、「グッと来て涙が出た」と
若い介護職員が話してくれたことがあった。
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